フランスの地方優良レーベル
LABEL BLEUから、98年に発表されたイタリアの女性ピアニスト、コンポーザー&アレンジャー、
Rita Marcotulliの名作"The Woman Next Door "。
カルロス・アギーレ"crema"やアンドレ・メーマリ"...de arvores e valsas "等と並ぶ僕の心の名盤のひとつです。
タイトルはトリュフオーの81年の同名の映画から。トリュフォーをはじめとする映画や文学、絵画作品などからモチーフを得たコンセプチャルな作品です。その背景がわかれば、ぐっと世界観も広がるとは思いますが、その音楽だけでも充分堪能できる素晴らしいアルバムです。
映写機が回りだす音とオーケストラの調音からはじまりStefano di Battistaの目の覚めるようなソプラノ・サックス・ソロで冒頭を飾る"Le Cinema Est Le Cinema"(1)。ワルツを基調にEnrico RavaとStefano di Battistaによるアンサンブル&ソロ"Les 400 Coups "(2)。アフリカン・パーカッションにJavier Girottoのサックスが駆け抜ける"Escape"(5)。悠久のフォルクロリカルな笛の音から様々な言語が立ち現れ、ダンサブルな展開をみせる"Masse Di Memoria"(6)。Aldo Romanoと子供たちの歌による小粋なボサノヴァ"Les Enfants S'ennuient Le Dimanche"(8)。モールス信号からインドのヴォーカル・パーカッション~タンバリンそしてヴォーカル・アンサンブルへと展開する"Antoine Doinel"(9)。ピアノとケルティック・ハープが郷愁を誘う"Arpeggio E Fuga"(10)。Enrico Ravaのいぶし銀のペットがたまらないシャルル・トレネの名曲"Que Reste-T-Il"(12)。最後はRitaのピアノとMichel Benitaのベースのデュオによる「未知との遭遇」のモチーフにした"Fragment (Of The Third Kind)"(13)で幕を閉じます。まるで一遍の映画をみたような心持ちにさせてくれます。
楽曲によってはヨーロッパ〜アフリカ〜アジア〜南米等の世界の音楽や、サンプリングやプログラミング、フリーインプロヴィゼーションなど、エクスペリメンタルなエッセンスを作品の随所に散りばめていて、これがいいスパイスになっています。
彼女の生みだした楽曲は「しなやかでいてアグレッシヴ」。すばらしい作曲センスとアレンジメントがほどこされた名曲揃いです。ぼくがグッとくる女性コンポーザーのすぐれた作品には、この「しなやかさとアグレッシヴさ」が同居しているものがおおいようです。
メンバーからしてジャズなのかもしれませんが、ジャズでないかもしれません。色んなエッセンスが詰まっていて「まとまりがない」とおもうひともいるかもしれません。でもこういう作品からエモーショナルなものが産まれているんですよね。
Rita Marcotulli LABEL BLEU hp: